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イベントレポート:みんなでつくる、ごみを生まない小売 #7

会の最後には、行政に求められることについても話し合いました。


「日本は国民の意識が高くないから法律を変えにくい」という声があることについて意見を求めると、日本とフランスを行き来している梅田さんからは「意識の高い人はフランスでも少数派」とのコメント。フランスで梅田さんの周りにいる人たちは、みんな普通にごみを出す、普通の人なのだそう。それでもフランスが変わっていっているのは、消費者の意識が高いからではなく、法律の力が大きいのだと言います。


「日本でビジネスをやっていても、フランスにいても、どれだけ働きかけたとしても、全世界の人の8割くらいは一生懸命がんばらないのではと感じます。だから、自主性には期待せずに、法律を変えて罰金でもなんでもして義務化する、というのがフランスのやり方」


「法律が変わればビジネスが変わる。企業が変われば、消費者の選択肢も結果的に変わる。フランスではパッケージフリーで買う以外の選択肢がないので、何も考えていない、環境意識の低い人でも、CO2削減に貢献する暮らしを自然と「させられている」ことになるんです。結局は、それが一番自然な変え方なのではないでしょうか」


フランスのマクドナルドでのイートイン。店内で使い捨て容器を使うことは2023年1月より禁止。リユース容器での提供が義務付けられている。

それでは、京都市はどうでしょう。


京都市は、2015年に「新・京都市ごみ半減プラン」を策定。ごみの量を2000年のピーク時と比べて半減させることを目標に掲げ、2018年に見事達成。その後もさらなる減量を目指し、市民や事業者に対してごみ減量の啓発を進めています。とはいえ、この先には課題が多くありそうです。


会場からこんな声があがりました。「京都市が2030年までに家庭ごみ中の飲料用ペットボトルの量を半分以下(2019年との比較)にすると目標に掲げていることをご存知でしょうか?」



くるん京都メンバーも含めて、初めて耳にする人がほとんどの様子。


京都市は、図の[4]にあるとおり、ペットボトルの半減以下(2019年との比較)を目標にしています。その他にも2030年までの目標をいくつか定めています。ただ残念ながら知られておらず、実際のところ、ペットボトルや使い捨てプラスチックの排出量は横ばい。ほぼ減っていません。


「ペットボトル半減」という目標の実現には、かなり踏み込んだ対策が必要に思えます。実効性のある対策を、段階的に実施していくこと。その過程では、市民や事業者に十分な周知を図り、協力を促していくことが求められるでしょう。ここに行政の恐れがあるのかもしれません。これまでのやり方を変えるとき、「知らなかった」「勝手に決められた」、現場からの反発や戸惑いはつきものです。


こうした懸念に対して梅田さんは「明日から変えようとしたらそうなると思うが、フランスも、何年も前からたくさん広報をしている」と、積極的に変化を打ち出していくことの大切さを指摘します。


実際、フランスでは2040年までに使い捨てプラスチック容器包装を全廃することを目標に掲げてから、さまざまな規制を段階を追って施行していっています。以下に示す資料からも、目標の実現に向けた、きめ細かな計画が練られていることがわかると思います。


  • 2022/1/1〜:野菜や果物のプラスチック包装を段階的に禁止

  • 2022/1/1〜:長ネギ、ズッキーニ、ナス、ピーマン、パプリカ、キュウリ、じゃがいも、ニンジン、トマト(丸型)、玉ねぎ、カブ、キャベツ、カリフラワー、カボチャ、パースニップ(ニンジンに似た根菜)、ラディッシュ、菊芋、根菜/リンゴ、梨、バナナ、オレンジ、みかん類、キウイ、レモン、グレープフルーツ、プルーン、メロン、パイナップル、マンゴー、パッションフルーツ、柿

  • 2023/7/1〜:丸型トマト以外のトマト、早生のタマネギ、早生のカブ、芽キャベツ、サヤインゲン/ブドウ、桃、ネクタリン、アプリコット

  • 2025/1/1〜:チコリー、アスパラガス、ブロッコリー、キノコ、早生のじゃがいも、早生のニンジン、ベビーキャロット、サラダ類(レタス、ノチジャ、ベビーリーフなど)、ハーブ、ほうれん草、スイバ、食用花、緑豆もやし、さくらんぼ、クランベリー、コケモモ、ホオズキ

  • 2026/7/1〜プラ包装全面禁止:スプラウト(発芽野菜)/「成熟した果物(les fruits mûs a point)」という表示付きの完熟状態で販売している果物、ラズベリー、イチゴ、ブルーベリー、スグリ、オタハイトグーズベリー、ローゼルの実、クロスグリ、サルナシ

  • 2023/1/1〜:イートインでの使い捨て容器の使用を全面禁止

  • 2024年パリ五輪:「使い捨てプラスチックのない大会」を掲げている


もちろん、国を上げての取り組みとは違って、いち自治体ですべてを変えることはできないでしょう。しかし京都は、世界中から人が集う観光地であり、知名度も影響力も大きな都市です。


会場からは、リユース容器を使ったごみの出ない地蔵盆のアイディアや、デポジットシステムの「京都モデル」という言葉も飛び出しました。ごみを減らすアクションに取り組む事業者も、斗々屋だけではありません。


会場に来られていた京都市の職員さんからは「『変えていかないといけない』というところから考えをスタートしないといけないと思っている」という言葉もありました。


「変えないといけない」「でも変えるのが怖い」と考えている人が行政にいるのなら、その人たちを動かすために、私たちはどんなことができるでしょうか。消費者や事業者が、互いに協力しあって変化の既成事実を積み重ねていくことも一案でしょう。行政に対して変化を求める声をしつこく大勢で上げて、「変えない方が怖い」と思ってもらうことも、大切かもしれません。


いずれにしても、すべては声を上げ、行動することから始まるのだと、そんな当たり前のことを、立場を超えたさまざまな声を聞く中で改めて感じました。


当イベントの事前アンケートから、生活者が行政に求めていること
当イベントの事前アンケートから、事業者が行政に求めていること

社会はつながっています。一人ひとりの消費行動は、商品やサービスを通じて、多くの人々の暮らしや人生に影響をおよぼします。どんな商品を選び取るかは、どんな社会を選び取るかに結びついています。毎日の選択の積み重ねが、今の社会を形づくっています。


さて、自分は一体どんな社会を望んでいるのだろう?


ぜひ一度、そんな視点で買い物かごの中を見下ろしてみてください。それまでとは違う発見が、あなたを待っているかもしれません。


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筆者:むるま

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