議論はさらに、量り売り事業展開の手応えや見通しにも及びました。
Q:代官山店出店の狙いは? 事業として成り立たせるために、環境問題に対する感度の高い人をターゲットにする意図などはありますか?
A:斗々屋のターゲットは、環境感度の高い人というわけではなく、普通のスーパーとして利用してくれる近隣のお客さん。近所だから使う、という人を増やしたいと思っています。
京都本店の常連さんには、「ごみが出ないのが快適で、斗々屋でしか買い物ができなくなった」と言ってくださる方もいます。そういう人が、環境感度が高いのかどうかはわかりません。ただ、世間ではまだまだ、「意識高い系のお店」と捉えられているんだろうな、とは思います。
でも、代官山店では、包装なしの野菜などを並べていても「気取っている」という目ではまったく見られず、割と気軽に買ってもらえていると感じます。平飼い卵が週に240個も売れたりして、京都よりもウェルカム感を感じていますね。
Q:量り売り事業がこれからどうやって広がっていくか、スピード感などのイメージはありますか?
A:具体的なスピードはわかりませんが、戦略としては、「量り売りだから」「環境にいいから」というのを押し出すのではなく、「美味しいから、楽しいからまた来たい」と思ってもらえるように目指すのがいいのでは、と、リニューアルしてから特に感じています。環境意識からではなく、おいしさや、自分の体にいい、という感覚から、既存のパッケージ済み商品ではなく斗々屋を選んでもらえるようになっていけたらいいなと。
エコな商品、ヴィーガンのメニューなどは、味気のないものというイメージがある人が多いと思うんですけど、そういう人が「すごく美味しいからまた行きたい」と思ってくれることを目指したいです。
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また、リユース容器を広めることのむずしさについては、エコトーンの太田さんが面白い例を挙げてくださいました。
「既存のコンビニで、どうやったらごみの出ない運営ができるかを探るために、2008年に京都市役所の中にコンビニが作られたことがあるんです。そこでは、マイボトルに飲料製品を詰められるような提供の仕方をしたら、マイボトルの持参率が上がるのでは? という想定で実験が行われて、他府県からも視察が来たりしていました」
そのコンビニでは、ペットボトルをマイボトルとして使う人が7割に上ったとのことで、ペットボトルへの依存度の高さが再認識される結果となりました。
この話を受けて、梅田さんも「飲料のデポジット容器での提供はむずかしい」との実感を語りました。現在は完全プラスチックフリーの使い捨て容器で販売している斗々屋のテイクアウトドリンクですが、開店当初はデポジット容器で提供していました。しかし結果は「惨敗」で、それらの容器はほとんど返ってこなかったのだとか。
「容器の価格も高めに設定して、欲しくなる人がいないように、ダサい色の容器にめちゃくちゃダサいシールを貼ったりしたんですが、結局みなさん容器を『お買い上げ』くださってしまった感じです(苦笑)。多分、飲み物をテイクアウトする方って、それを持ってどこかに移動したい、そもそも帰ってくる予定がない人が多いんですよね。だから今は、デポジット容器はやめています」
しかしその一方で、新しい挑戦も始めているとのこと。その中のひとつが、京都で3店舗を展開するオーガニックスーパーHELPとの連携。
「去年のイベント以降、斗々屋さんのデポジットシステムをHELPと一緒に展開できないか、ということを相談していたんです」とお話しくださったのは、HELP一乗寺店の田中さん。デポジット容器の一番の課題は、返却先へのアクセスです。そういった点で、さまざまなスーパーで共通の容器が返却できるようになれば、デポジット容器使用のハードルはぐっと下がります。HELPさんは、そのひとつのモデルになれればと考えたのです。
また、元々お惣菜を扱っていなかったHELPですが、2023年のオープンセミナーで斗々屋の運営について聞き、ごみを出さないためには食品加工のセクションが重要な役割を担っていることに気づいたのだそう。そして2024年3月から、ついに惣菜部門を立ち上げることになりました。
具体的な展開としては、まずは斗々屋で販売している「はらぺこシリーズ」、サラダ、お弁当、デザートなどを、デポジットクリア容器に入った状態でHELPでも販売開始します。「メニュー開発などは内部に料理のプロがいないとすぐには動けない部分ですが、斗々屋さんと一緒にやっていく中でヒントが得られれば、と思っています」と田中さん。使用後の容器はもちろん、HELPと斗々屋の両方で返却できます。
このシステムが軌道に乗れば、デポジット容器の京都モデルを作れるかもしれません。そこに他のスーパーも加わってくれれば、小売業から出るごみを一気に減らすことができます。なんとも夢のある話ではないでしょうか。
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筆者:むるま
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