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イベントレポート:つなげよう、ごみを生まない『知恵』#5

  • 執筆者の写真: kurunkyoto
    kurunkyoto
  • 1 日前
  • 読了時間: 6分

更新日:6 時間前

リサイクルという言葉の裏側で

寺井さん(ごみの学校

ごみの学校では、ごみにまつわる様々なイベントを行っている
ごみの学校では、ごみにまつわる様々なイベントを行っている

「プラスチックごみは、分別しても再資源化が難しいんです」。そう語ったのは、長年ごみの現場に関わってきた寺井さん。現在は株式会社となった「ごみの学校」のFacebookコミュニティには2900人もの人が参加し、貴重な情報共有の場となっています(ごみを循環させていく・出さないようにするにはどうしたらいいか、ご相談したい事業者の方の相談にも乗っておられます)


寺井さんが強調したのは、プラスチックという素材のやっかいさ。1950年代に登場して以降、便利さゆえに急速に広まったプラスチックですが、いざリサイクルしようとすると、その「多様さ」が大きな壁になります。ペットボトルや家電の一部のように成分が特定できるものはまだよいものの、使い捨てプラのように「何からできているかわからないもの」は、現場での分別がとても難しい。そしてその分別作業には、時間も人手もかかるのが現実です。


だからこそ、「使い捨てプラスチックは減らしていかないといけない」。ただし、プラスチックという素材自体を「悪者」にしてしまうのは危険だとも、寺井さんは言います。医療機器や科学分野など、耐久性や清潔さが求められる現場では、他素材では代替できないケースもあるからです。


また、近年話題の「バイオマスプラスチック」についても、「中身や使い方をよく考えずに飛びつくのは危うい」と指摘。大切なのは、「これは本当に必要なプラか?」「どこでどう使われるべきか?」という視点を持って、素材の選択そのものを問い直すことだといいます。


単純な「リサイクルすれば解決」といった構図ではないこと。むしろ、どこでどんな素材を使い、どこで減らせるかを社会全体で考えていく必要がある。寺井さんの話は、ごみの裏側にある構造の複雑さをていねいに解きほぐしながら、「それでも向き合っていこう」というメッセージを届けてくれるものでした。


服の循環と、若者たちの感度

松本さん(京都市地球温暖化対策室)

衣服を回収して循環させる取り組みは、若者にも刺さっている
衣服を回収して循環させる取り組みは、若者にも刺さっている

衣類の分野からのアプローチについてお話しくださったのは、地球温暖化対策室の松本さん。市民のライフスタイルを脱炭素型へと変えていく取り組みの一環として、今もっとも注目されているプロジェクトがRELEASE⇔CATCH(リリースキャッチ)です。


この取り組みは、京都の民間アパレル企業が中心となり、不要になった衣類を回収・再流通させるプラットフォームを構築するというもの。京都市もその趣旨に共感し、連携して後押ししています。たとえば京都信用金庫の全店舗に衣類回収ボックスが設置され、集まった服は古着店で販売されたり、イベント「循環フェス」の会場で無償提供されたりしています。


この循環フェスはすでに6回開催され、若者を中心に人気を集めています。参加者の半数が29歳以下、3分の1が学生というアンケート結果からも、ファッションという身近な入り口が、3R(リデュース・リユース・リサイクル)への関心を高めるきっかけになっていることがうかがえます。


中でも印象的だったのは、会場アンケートで、「服の手放し方に困ったことがある」と答えた人が8割以上にのぼったこと。「まだ着られるのに捨てるのはもったいない」「ゴミとして捨てることに罪悪感を覚えるようになった」といった声が多く聞かれ、イベントを通じた意識の変化が確実に起きていることがわかります。


こうした変化を一過性に終わらせず、持続可能な仕組みにしていくことが次の課題です。松本さんは、「売れる仕組みづくり」や「リサイクル技術を持つ事業者との連携」、「若者の人材育成」などを今後の展望として語り、さらにこの取り組みを学校教育にも取り入れたいとの構想も披露してくれました。


最後には、「脱炭素×ファッション」「脱炭素×健康」「脱炭素×住まいづくり」といったテーマで、市民・企業・行政がともに進めるプロジェクトを広げていきたいという熱意が語られました。今回のイベントのような市民の集まりを通じて、もっと多くの声やアイデアを集め、未来の循環型社会づくりにつなげていくことへの期待を込めて、お話しを締めくくりました。


イベントだけで終わらせない、リユースの未来

太田さん(エコトーン

祇園祭の「ごみゼロ大作戦」も2025年で12年目
祇園祭の「ごみゼロ大作戦」も2025年で12年目

最後にお話しくださったのは、リユース食器の普及に長年取り組んできたエコトーンの太田さん。日本でまだ「リユース食器」という言葉すらなかった2000年ごろから、京都を拠点にその名称を普及させ、今では全国各地のイベントや自治体に広がる仕組みを支えてこられた方です。


太田さんはまず、リユース食器の背景について紹介しました。もともとは使い捨て容器に代わる「洗って再使用できる食器」を指すもので、90年代の学園祭などでも手洗いで取り組まれてきました。しかし、洗い作業の大変さから継続が難しく、「洗う手間」というネガティブな面ではなく「再使用できる食器」というポジティブな面にスポットを当てて名前をつけたことで、文化として定着させてきたといいます。


今、大きな転換点となっているのが、2025年開催の大阪・関西万博会場ではフードトラックの屋外販売でも、原則リユース食器が導入されるとのことで、太田さん自身も持続可能性部の検討委員として関わり、事業者との調整を続けてきました。


さらに、万博を契機に、日本では珍しい「食器の洗浄専用工場」が京都と大阪に新設。これにより、テイクアウト容器のシェアリングサービスや、オフィスでの使い捨て削減といった取り組みが本格的に広がる可能性が出ています。ヨーロッパではすでに進んでいるこうした流れを、日本でも根付かせていきたいとの展望が語られました。


「イベントは週末だけ。これをどう日常化できるかが勝負」と太田さん。例えばスーパーの肉や魚のトレーをリユースに切り替えたり、トレーそのものをなくす流れを加速させることも視野に入れているとのこと。「使い捨てが当たり前になっている領域を見直し、最適化を進める過渡期に今、私たちはいる」と、これからの変化に期待を込め、熱いトークを締めくくりました。


Q:リユース食器の洗浄に関わるエネルギーコストは高くないですか?

A:洗剤や電気、水を使うから、確かに一見すると環境負荷は高く見えます。でも、実際には、1つの容器は5回以上使えば、使い捨てより環境負荷は下がるというライフサイクルアセスメント(LCA)のデータが出ています。

リユース食器が平均200回以上使われていること、万博でも全面導入されることなどを考えると、輸送コストなども含めた全体のLCAでは、やはりリユースの方が環境負荷は低いです。


Q:万博を機に京都と大阪にできる洗浄施設の活用について、何か具体的な計画は出ていますか。

A:そこはまだこれからの部分。ですが、このインフラを活かして、テイクアウト容器のシェアリングやオフィスでの使い捨て削減といった方向にも展開していきたいです。日常の中でどう広げていくかが次の課題だと考えています。


リユースを選ぶ人は増えているけれど、一般層にはまだ届ききっていない。だからこそ今は過渡期であり、仕掛けを作るタイミング。選ばれるためのお金だけではない価値を、もっと広めていきたいです。

そのためにも、環境に配慮された売り方・イベントづくりが、ちゃんと経済的にも回るような形を一緒に作りたいので、具体的な相談があればぜひお声掛けください。


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