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セミナーレポート: 京都から、ごみを生まない「小売」を考える #4

パネルディスカッション

セミナー後半は「売り手と買い手のパネルディスカッション」と題して、斗々屋さんだけでなく、京都市内の3つの事業者さんにもセッションに加わっていただきました。

斗々屋さんが積み上げた事例を、小売の現場でどのように活かしていけば良いのか。

それぞれのお店の実例をもとに、考えてみました。

パネラーのご紹介

橋本晃輔さん(株式会社ヘルプ HELP一乗寺店 店舗マネージャー)

HELPは、京都に3つの店舗を構えるオーガニックスーパー。

1982年の創業当時から、環境面にフォーカスを当て、間口を広く、より多くのお客様にオーガニック食材を届けられるように、という思いを大切にしていらっしゃいます。

ごみ問題については、2006年からレジ袋を有料化するなどの取り組みをされていますが、「そこからストップしてしまっている」というのが橋本さんの実感だそう。

「小売をしている中で、『お客様はこういうことを求めているのではないか』という固定観念に縛られていることを課題として感じました。梅田さんのお話には、売り手として勇気の出る言葉が多くあったので、できることからやってみたいという気持ちになっています」と、梅田さんの言葉に、大きく心を動かされたようでした。


楠本公平さん(きたやま南山 取締役社長)

創業1971年の老舗焼肉店、南山は、一口では説明できない奥の深い会社さん。

サステイナブルに育てられたお肉を焼肉や食肉販売で提供するほか、コロナ禍では、お惣菜等を扱う食料品店も開店。また、食育に力を入れた保育園も運営されています。

斗々屋にもお肉を卸しており、「斗々屋さんと出会うことで、日々たくさんのごみを出していることに気づいたんです」と楠本さん。

まずはプラスチックごみの削減から取り組もうと考え、地下の食料品店では現在、量り売りを行っています。また、生肉もプラスチック包装を避けて、紙に包んでお渡ししているとのこと。

梅田さんのお話を受けて「表示の仕方を工夫するなど、明日からできることを実行したいです」と意欲を語られました。


赤塚瑠美さん(Natural foods DONGURI、くるん京都メンバー)

ナチュラルフーズ・ドングリは、有機野菜や自然食品、人と環境にやさしい日用品を数多く扱う、1987年創業のオーガニック・ショップ。

くるん京都メンバーでもある赤塚さんは、活動を通じて、自分たちのお店がいかにごみを出しているか気づいたとのこと。量り売りを実施するなど、ごみの少ない売り場作りを目指しています。

とはいえ、お客様にはまだまだ浸透していないのが実情だそう。

「ドングリとしてごみを減らしたいと思っているということを、まずお客さんに伝えることから始めたい」という思いを共有くださいました。


そして「買い手」代表としては、くるん京都メンバーの佐藤文絵さん(編集・ライター)が参加。

くるん京都メンバーが消費者として日々抱いている疑問や思いを、パネラーのみなさんへ投げかけました。

(以下、敬称略)



ごみを減らすためにできることは?

棚にぎっしりと並ぶ裸の葉野菜たち

佐藤(くるん京都):これはハワイの普通のスーパーの光景です。こういうふうに野菜が裸売りされているんですね。


佐藤:一方の日本は、ほとんどの野菜がプラスチックに包まれている。


価格は容器の通販サイト【容器スタイル】より

佐藤:私たち生活者は、包装資材を無料のように思っている気がします。ところが調べてみると野菜の袋(ボードン袋)は5円くらい。レジ袋より高いんですね。発泡トレーも、想像以上に単価が高くて、たとえば木目が付くだけで5円も高くなるなんて!と驚きました。

こういう包装資材の値段をお店の側が表示して、他の選択肢を示されたら、生活者の消費行動も変わるんじゃないでしょうか?

そんなことも踏まえて、それぞれのお店の取り組みを、お話しください。


橋本(ヘルプ):HELPでは、裸売り可能な野菜は裸売りにしています。


橋本:とはいえ、多くの野菜は「日本のスーパーってこうだよね」という形になってしまっています。


橋本:卵は、20年近く前から裸売りをやっています。年間、6万玉くらいはバラで売れていて、データでは、うちで卵を買ってくださっている7万人くらいの内、3割くらいはバラで購入してくれています。この割合は、徐々に増えてきている印象ですね。


橋本:一部商品の発泡トレーは、古紙回収に出せる紙トレーに変更しました。微々たる変化ですが、これで年間、960kg程度のプラを削減できています。


橋本:売り場では、廃棄されるワイン箱を什器に加工して使っています。バックヤードでも、斗々屋さんのようにごみを減らすところまでは行けていませんが、分別は徹底しています。


佐藤:これを見られて、梅田さん、どうですか?


梅田(斗々屋):日本のオーガニックショップは、(品物が)高い分ちゃんと包んでほしいと思っているお客様が多いイメージがあって、それがより、(パッケージフリー商品の)買われにくさに繋がっているのかもしれないと思っているんです。


日本にあるオーガニックの考え方はアメリカ寄りで、自分たちの健康のためにオーガニック商品を消費する方が多いと思うんですね。

でもヨーロッパのオーガニックは、社会的に、地球に優しく、土壌を豊かなままに残そうという感覚があるので、そことの違いが日本のオーガニックの「つまずき」になっているのかもしれません。


ヘルプさんがオーガニックを広める上でも、障害になってくるのはその部分だと思います。自分たちがどうしてオーガニックを勧めたい思っているのか、それは自分たちの健康のためだけじゃなくて、すべてが循環しているんだ、ということをお客様にご理解いただけたら、だからごみを減らしたいんだ、という思いも含めて理解していただけるんじゃないでしょうか。


佐藤:生活者の立場では、梅田さんがおっしゃったような理由で、「過剰包装だから買わない」という人もいるんですね。そういう人のモヤモヤは、内に仕舞われてしまうことが多いと思うんです。また、そんな選択をする人は今後増えていくのではと思っています。今すでにそういう選択がなされていることも知っていただけたらと思います。


楠本(南山):コロナ禍でも食の流れを止めないために、と、南山が食料品の小売を始めたのは、まだ斗々屋さんと出会う前でした。当時は当たり前に、パック詰のお惣菜がずらっと並んでいたらお客さんは手に取りやすいだろうという感覚だったんです。その後、斗々屋さんと出会って、ごみへの意識が変わったことで、お惣菜は容器を持ってきて購入してもらう、という理想のもと、今はチャレンジしています。


楠本:お肉の方は、海外の精肉店の雰囲気を出したくて、最初はラップなしで販売していました。

しかし、お肉は1日でどんどん色が変わって、最終的に真っ黒になってしまうんですね。海外ではそれが普通なんですけど、日本ではそうなると誰も手に取ってくれなくて、今度は食品ロスに回ってしまう。

なので、もやもやした気持ちはあったんですけど、今はラップはして、その代わり、プラスチックではなく紙に包んでお渡ししています。


赤塚(DONGURI):うちではリスクが少なく販売できる乾物で、小さい量り売りコーナーを作っています。ただ、容器持参のお客様は本当に少ないです。


赤塚:あとは、週に1回「お野菜セット」を定期便で届けていまして、お客様に事前に確認を取ってOKであれば、野菜を裸で入れたり、再利用した袋、通い袋を利用したりしています。

プラスチックごみを減らすという点でDONGURIが一番がんばれているのは、このセットですね。


赤塚:袋に入っていた方が手に取りやすい、という利便性と、量り売りをしたいという思いの折り合いがつかず、現状はリスクの少ないものから、裸売りとパック売りの両方を置いています。

ちょっとわかりにくいんですけど、袋入りの方が袋代で少し高くなっているので、今後はそのへんをもっとわかりやすく伝えていきたいと思います。


赤塚:洗剤の量り売りも一応やってます。でも、まだうまくオペレーションが出来上がっていないこともあって、お客様も手軽な容器入りを買っていく感じです。でも、量り売りの方をもっと増やしていきたいですね。


梅田:これ、容器入りの値段を200円くらい上げちゃえばいいんじゃないですか?

1回目は容器入りを買っていただいて、2回目からはそれを何度も持ってきていただいたらいいと思うんです。

価格差があるとお得感があってお客様も毎回持ってこられますし、容器も、自宅でそれを捨てなきゃいけない手間がありますし。


私めっちゃ面倒くさがり屋なんで、ごみを出さない生活に慣れちゃうと、ごみを出すこと自体がしんどくなっちゃうんですよね。その感覚でいくと、こういう容器は繰り返し使いたいと思ってしまう。

「こっちの方が楽だよ」ということが伝われば、容器持参も苦痛にならないと思うんです。


企業から斗々屋に研修に来ていただいたときは、キッチン付きのアパートに一ヶ月住んでいただいて、斗々屋で買い物をしてもらうことで、ごみが出ない生活を体験していただくんです。それで、ゼロ・ウェイストな生活がどういうものか気づいていただける環境を作っています。


赤塚:店頭で手間がかかっても、お家でストレスフリーになるということを伝えていけたらいいですね。

元々この商品を買われていた方に、急に値段が上がった理由を丁寧に伝えていくというのも含めて、やってみます。


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※ 画像は佐藤文絵氏、ヘルプ、南山、DONGURIご提供。無断転載はご遠慮ください。


筆者:むるま

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