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セミナーレポート: 京都から、ごみを生まない「小売」を考える #3

生ごみは週 1 回、一斗缶 1 個。最後はコンポストへ。


──海外や地方からの商品など、宅配で届くものは、どのようにごみを減らしていますか?


野菜などの宅配は全部、段ボールに重いものから順に直接詰めて、間に新聞紙を挟んで送っていただいている感じですね。

宅配のものには、プラの容器で届くものもあるんです。輸入品も、アーモンドのように、法律的に絶対にプラを避けられないものもあるんですけど、そういったものはできるだけ 10kg とか大きな袋で輸入するようにして、その袋も工夫して何回も繰り返し使っています。


──通い袋や通い箱だけが、ごみを減らす手段ではないと。ちなみに、納豆も販売されていますが。


納豆は、ステンレス容器ごと納豆屋さんにお渡しして、そこに納豆を詰めて発酵していただいて、そのまま蓋を閉めて納品していただいてます。返ってきた容器は、1 回斗々屋で洗浄してからお渡しするんですけど、納豆屋さんでは大きなステンレス製の鍋でふつふつ煮沸消毒してから仕込まれるとおっしゃってました。


──大きな袋で注文されるとのことですが、大きなロットで仕入れて、かつロスを出さないための工夫はありますか?


実はうちは卸の業務もやっていて、全国で 80 店舗くらいいらっしゃる「ととフレ(斗々屋フレンズ)」さんの店舗に、ごみの出ない小ロットで包装し直して分け売りする、みたいなこともしてます。でも、大体 10kg、20kg で仕入れているんですけど、今はもう余って困るということはそんなにないです。


──小ロットでごみを出さずに購入したい方は、ととフレさんの仲間に加わっていただくという選択肢もあるんですね。ちなみに、キッチンの併設が難しい小さいお店でロスを出さないためには、どんなことができるでしょう?


私たちがやっているのは、ロスを出さないものを販売することですね。

あとは、スタートアップの「ととフレ」さんには、斗々屋が扱っている商品(直輸入食品だけで 60 品目)を委託というかたちでお預けして、残ったらうちに戻してください、請求も売れた分だけ請求させてもらいます、というのをスタートアップ支援としてやっています。


──それは大きな助けになりますね。ちなみに、「三毛作」をやっていても出てしまうロスはありますか?


最初、惣菜だけだったら絶対ロスが出るだろうと思って、夜の飲食店もオープンする予定だったのですが、オープンして2日目でまん延防止(等重点措置)になってしまったので、夜の部門は諦めたんです。それでロスが出るんじゃないかと心配してたんですけど、意外に、毎日 20 品目くらい出しているお惣菜で回せてしまって、(ロスは)出なかったですね。

廃棄はほとんど何も出なくて、卵の殻とか野菜の食べられない部分が、1 週間に一斗缶 1 個出るくらい。それを農家さんに回収していただいている感じですね。


──最後はコンポストにされるんですか?


そうですね。


品質管理は作り手とともに試行錯誤


──開店から 1 年半で、品揃えに変化はありましたか?


品揃えは、売れないものはちょいちょい排除して、喜んでもらえそうなものを新たに仕入れています。あとは、さっきご紹介した冷凍食品も、スタッフの声も取り入れながら品揃えを考えたりしています。


──京都本店の看板商品は?


オープンからずっと売り上げを上げているのはお稲荷さん。やっぱり食べやすい、買いやすいですから。お惣菜の部門はすごく売り上げが上がっているかなと思います。

食品部門ではナッツバターとかも人気ですね。絞りたてナッツバターはどこででも売っているわけじゃないので、というのがあると思います。


──国分寺店とは売れ筋は違いますか?


国分寺店は、ナッツ類やドライフルーツのようなおしゃれ食材がよく売れています。


──商品のこととなると、やはり品質管理の部分が気になりますが、衛生面が問題になることはありませんか?


量り売りの野菜はお客さんが触りますけど、乾物とかは直接触らないですよね。皆さん、買うものだけ蓋を開けて、トングで取って、自分の容れ物とかに入れて秤にかけられるので、実は触るところはほとんどないんです。

野菜に関しては、オープン当時ガチガチのコロナ禍だったので、裸の野菜を置いていて大丈夫なんかな、という意見もたくさんいただいていて、私自身も心配していたんですけど、意外にお客様は誰も気にしない感じでした(笑)

やっぱり、包装されたものとされていないものを置かれたら、包装されているものに慣れているのでそっちを買われることが多いのかもしれないですけど、うちに来たらパッケージに入ったものの選択肢がないので、皆さん気にならなくなるんじゃないでしょうか。


──選択肢ということでいうと、量り売りを実施されていても、パッケージされたものが並んでいると、中々容器持参をしてもらえないということで悩んでいる店舗さんもあります。やはり、選択肢の有無というのはポイントになってくるんでしょうか。


はい。フランスとかだと、値段を変えているんですよ。個包装の方は、ちょっと高い。で、量り売りで買うと安いから、量り売りの方にお客様が流れるような仕組みになっていると思います。


──こっちの方がお得だよ、というのをわかりやすくするんですね。

──品質管理の話に戻りますが、虫対策やナッツの酸化予防はどうされていますか?


京都本店の方は結構回転率がいいので、一回什器に入れたものは、まあまあの速さで流れていくんです。でも、「今週、これ流れ悪いな」というものがあったら、ローストしてナッツバターにしたりとか、グラノーラに加工したりとか、そんな感じで商品1個1個について、加工する速度を調整しています。


──加工できる部門があることが、品質管理につながっているんですね。


そうですね。お野菜や果物も、例えばイチゴとかは一粒ずつ悪くなっていくので、一粒ずつ管理しています。朝、野菜を並べるときに、疲れてきている野菜があれば、すぐにキッチンに回す。悪くなったら加工のしようがないので、悪くならないうちに、鮮度のあるうちに加工するというのは心がけています。


──それでいうとスパイスなどは、一度に大量に使えず、品質管理が難しそうですが。


スパイスは、調子に乗ってオープンのときにめっちゃ入れたので死にかけたんですけど(笑)、今はガラムマサラとかカレー粉とかをオリジナルで作って販売したり、ランチでカレーを出しているのでそこで使ったりして、スパイスの種類はできるだけ保ったままやってます。


──香りが飛ばないようにする工夫は?


小さい容れ物にしています。


──なるほど。店内の温度管理はどうされていますか?


年間を通して 20℃ に保っています。

オープンしたのが夏で、湿気が心配でした。土に還るシリカゲルを開発されている会社さんがあって、それが紙パッケージなんですね。中身もコンポスト化できるので、うちはそれを乾燥剤として入れることで、湿気対策をしています。


アクリルの蓋が付いた木箱の中に葉野菜がディスプレイされている。
アクリルの蓋が付いた木箱の中にきのこがディスプレイされている。

湿度調整に長けた木箱は、葉野菜やキノコ陳列に最適。


──これは店内の様子ですね。


はい。オープン冷蔵庫は風が出て、葉っぱ類が疲れてしまうので、冷蔵庫の中に木箱を入れています。これは上の蓋がアクリル板になっていて、このキノコを作っている方が手作りで作ってくださったんです。

こんな感じで葉野菜を管理していると、ものによっては 2 週間くらいピチピチしていて、いつキッチンに出そう、てなるくらい鮮度を保ててます。

オープンしたときは私たちも毎日毎日改良して、生産者さんに、「このお野菜は一回水につけておいたらどうでしょう?」とか相談したりしてやってきました。最近は大体「この野菜はこう」みたいなノウハウができてきたので、毎晩その対応方法で野菜は仕舞って、朝こうやって並べるっていうふうにしています。


──そこも生産者さんと試行錯誤してきたんですね。


生産者さんは採れたらすぐ出荷しちゃうから「俺らわからんねん」とか言われたりしちゃうんですけどね(笑)


──最後に、京都本店を開店してから方針が変わった点や、今後の展望などあれば。


方針は全然変わっていなくて、全国に私たちが培ってきたノウハウを共有できたら一番話は早いかな、と思っていて。直営店を何店舗も出す体力はないんですけど、今後の展開としては、斗々屋京都店のような、コンビニくらいの規模のお店が日本全国に広がるような取り組みをしていこうと思っています。


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筆者:むるま

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